公開日:2026.08.03

法律事務所のサイトを訪れる人は、比較検討の途中にいる企業か、
不安の只中にいる個人か、どちらかです。
状態の異なる読み手を同じ導線に乗せれば、どちらも取り逃がします。
ホームページ制作専科が、取扱分野の構造化から相談への導線設計まで、
弁護士事務所サイトの設計を解説します。
弁護士事務所のホームページ設計における最大の論点は、読み手の状態が二分されることにあります。
企業法務の依頼者は複数の事務所を比較する検討過程にあり、判断材料として実績と体制と専門領域を求めます。
一方で個人の相談者は紛争や不安の只中にあり、必要なのは自分の状況に該当するかの確認と、相談への到達経路です。
この二者を単一の導線に統合すると、いずれの要求も満たせません。
したがって設計は、取扱分野の構造化と導線の分離を軸に据えます。
さらに弁護士には士業のなかで最も体系的な業務広告の規律が置かれており、氏名および所属弁護士会の表示が義務づけられるほか、依頼者や過去に取り扱った事件の表示には同意が要件となります。
本ページでは、表現の制約を前提としたうえで成立する法律事務所サイトの設計要件を整理します。
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法律事務所のホームページを設計するとき、最初に切り分けるべきことがあります。
訪問者は二種類います。
ひとつは企業です。
契約、労務、不動産係争、債権回収——業務上の必要から弁護士を探しています。
複数の事務所を比較し、実績と体制と対応領域を判断材料にします。
冷静な検討過程にある読み手です。
もうひとつは個人です。
離婚、相続、交通事故、借金。
多くの場合、当事者は不安の只中にいます。
求めているのは比較のための情報ではなく、「自分の状況はここで扱ってもらえるのか」の確認と、相談までの経路です。
この二者は、必要とする情報も、読む速度も、意思決定までの距離も違います。
同じ導線に乗せれば、どちらも取り逃がします。
企業向けの重厚な実績紹介は個人には響かず、個人向けの平易な導線は企業の検討には足りません。
私たちが手がけた事務所では、法人向けの法務サービス(不動産係争)と個人向けサービス(離婚・不倫問題)の専門分野をそれぞれフィーチャーし、導線を分けたコンテンツ設計を採りました(弁護士法人ライズ綜合法律事務所 様)。
旧サイトの課題に対して、ユーザビリティ、デザイン、構造、UI設計、コンテンツライティング、ブランディングまで全面的に作り替えています。
日本弁護士連合会の統計によれば、弁護士人口は2000年の17,126人から2025年3月31日現在で46,243人へと増加しています。
25年で約2.7倍、直近5年(2020年42,164人)からも4,000人以上増えており、増加は続いています。
依頼者から見れば、選択肢が増え続けている環境です。
事務所の側から見れば、選ばれる理由を明示しなければ埋もれます。
そして弁護士の場合、その「選ばれる理由」を表現する自由度が、業務広告の規律によって制限されています。
制約のある環境で差別化するには、表現の強度ではなく設計の質で勝つしかありません。
弁護士サイトの設計で最も難しく、最も効くのが取扱分野の構造化です。
まず表記の問題があります。
日弁連の業務広告に関する指針は、専門分野の表示について「表示を控えるのが望ましい」としています。
専門性の判断に客観的な基準がなく、自称を許せば誤導のおそれがあるためです。
スペシャリスト、プロ、エキスパートといった用語も同様に扱われます。
一方で、「取扱い分野」「取扱い業務」という表示は専門等の評価を伴わないため問題とされません。
経験の豊富でない分野については「積極的に取り組んでいる分野」「関心のある分野」と示すことが望ましいとされます。
つまり「専門分野」という定番の見出しが、そのままでは使えません。
これはサイト構成の根幹に関わる制約です。
法律の体系に沿って分野を並べると、専門家には整然として見えるが、相談者には探しにくいです。
必要なのは、読み手が自分の状況から入れる入口です。
企業であれば事業のフェーズや部門(契約、労務、債権回収、事業承継、係争)。
個人であれば置かれた状況(離婚を考えている、相続が発生した、事故に遭った、返済が難しい)。
同じ分野を、読み手の言葉で並べ替える作業が設計の中身になります。
私たちが担当した事務所では、債権回収を軸とする事務所の主要サービスを「任意回収」「法的回収」「建物明渡訴訟」として整理し、それぞれへの流入導線を最適化しました(神田お玉ヶ池法律事務所 様)。
業務の呼び方を、依頼者が探す形に合わせています。
弁護士サイトは、人の権利と財産に関わる情報を扱います。
発信者が実在し、資格を有し、責任の所在が明らかであることを、サイト構造として示す必要があります。
そして弁護士の場合、これは規程上の義務でもあります。
日弁連の業務広告に関する規程は、広告中に氏名および所属弁護士会の表示を求めています(第9条)。
弁護士法人であれば名称、主たる法律事務所または広告に係る従たる法律事務所の名称、所属弁護士会が必要になります。
全国すべての弁護士および弁護士法人は、各地の弁護士会に入会すると同時に日弁連へ登録する仕組みになっています。
所属弁護士会の記載は、実在性の証明そのものです。
フッターや事務所概要の設計段階で織り込むべき事項です。
表現の自由度が制限されている領域では、言葉以外の要素が働きます。
色、余白、写真、書体——ブランド設計は規制の外側から信頼を伝える手段になります。
私たちが手がけた事例では、企業法務を中心に事業再編・M&A、事業承継・相続を扱う事務所について、立地である池袋グリーン大通りの緑をモチーフに採用しました。
「厳格で知的なイメージと自然が調和する」というコンセプトのもと、実際の木々の写真と緑を基調に、ベージュと薄茶をベースカラーとしてブランドイメージを定義しています(宇賀村・澤田法律事務所 様)。
事務所固有の資産は、立地にも沿革にもあります。
それを視覚言語へ翻訳できれば、他事務所と同じ業務内容でも印象は分かれます。
なお、日弁連の指針は、事実に反しない限りキャッチフレーズの使用を認めています。
規制の枠内でトーンを表現することは可能です。
弁護士サイトで「実績を載せたい」という要望は必ず出ります。
ここには規程上の要件があります。
業務広告に関する規程 第4条は、次の事項を表示した広告をすることができないと定めます。
勝訴率は例外なく表示できません。
顧問先や事例は、同意があれば掲載できます。
指針は、同意を得る際に範囲や有効期限その他必要な事項を明示すべきこと、過去の顧問先を表示する場合はその旨を明示して誤導を避けるべきことを示しています。
さらに「お客様の声」については、実在の依頼者が関与していない文章を記載することが、事実に合致しない広告の例として明示されています。
これは表現の問題ではなく工程の問題です。
「実績を載せる」という一行の要望が、同意取得という作業を伴います。
設計段階で洗い出しておかなければ、公開直前に掲載可否の判断で止まります。
私たちは、掲載したい情報を整理する段階で、同意が必要な項目を明示し、確認の順序を含めた進行計画を立てます。
規程の解釈や個別表現の可否の詳細は「士業の広告規制とホームページ」で扱います。
Web制作では、簡易な入力で結果が出る診断ツールやシミュレーターが定番のCV施策です。
弁護士サイトでは、この定番が使えない場合があります。
日弁連の指針は、「借金減額診断」「借金減額シミュレーター」「交通事故慰謝料算定システム」等と称するページについて、入力だけでは事件の処理方針を判断できないにもかかわらず判断できるかのように誤信させる表現として、違反例に挙げています。
さらに踏み込んだ規律があります。
そうしたページで閲覧者に連絡先を入力させても、その入力が事件の依頼または法律相談の申込みである旨がページの記載から明確でない限り、その閲覧者は規程上「面識のない者」に留まります。
面識のない者への訪問・電話による広告、および承諾を得ない電子メール・ファクシミリ・SMS・SNSメッセージによる広告は規程が禁じています(第5条)。
本人確認書類の画像を提出させていても同様とされます。
つまり、フォームを設けて連絡先を集め、そこへ営業的な連絡を行う設計は、規程違反になり得ます。
回避するには、そのフォームが法律相談の申込みであることをページ上明確にするなど、文言レベルの設計が必要になります。
問い合わせ導線は、デザインではなく規程理解の対象です。
一般的なCV最適化の手法をそのまま持ち込めない点が、弁護士サイト設計の難しさであり、制作会社を選ぶ際の判断材料にもなります。
弁護士事務所のサイトを作り替える理由は、多くの場合、組織の節目にあります。
個人事務所から弁護士法人への移行に際して、私たちが担当した事務所では「より高い信頼と品格を備えたブランドイメージの確立」を目標に据えました。
事務所のサービスと競合優位性を整理し、依頼者が「ここなら任せられる」と感じられる印象の構築を課題としました。
トップメッセージに「前に進む力となる」というスタンスを置き、法律事務所らしい堅実さをベースに、余白を活かした読みやすいレイアウトを採用しています(神田お玉ヶ池法律事務所 様)。
法人化に伴う変化は、名称だけではありません。
責任の所在、体制の規模、対応できる領域が変わります。
サイトはそれを対外的に伝える媒体です。
リニューアルの工程と考え方は「士業ホームページリニューアル」で詳しく扱います。
法律問題を抱えた人の行動は変わってきています。
まず生成AIに概要を尋ね、そのうえで事務所の公式サイトに裏を取りに来ます。
これは弁護士事務所にとって不利な変化ではありません。
AIは一般的な説明を返せるが、誰に相談すべきかの答えは持ちません。
実在性と取扱分野と相談経路を明示できている事務所が、確認の受け皿になります。
求められるのは、構造の明確さです。
取扱分野の階層、見出しの論理、構造化データの実装——機械が正しく読み取れる形式が、引用と参照の条件になります。
具体的な施策は「AI時代に集客力を高める士業ホームページ」で扱います。
弁護士事務所のホームページ設計は、読み手が二分されるという前提から始まります。
企業と個人、比較検討と不安——状態の違いを導線の分離として実装することが出発点になります。
そのうえで、取扱分野を読み手の言葉で構造化し、氏名と所属弁護士会を含む実在性を示し、ブランド設計で言葉にできない部分の格を伝えます。
実績や事例を載せるなら同意取得を工程として組み込みます。
問い合わせ導線は、規程を踏まえた文言設計まで行います。
表現の自由度が制限された領域では、設計の質がそのまま差になります。
規程を守ることと、事務所の個性を伝えることは両立できます。
事務所の取扱分野と、増やしたい相談の種類をお聞かせいただければ、必要な構成をご提案します。
「専門分野」という見出しは使えないのですか。
日弁連の業務広告に関する指針は、専門分野の表示について「表示を控えるのが望ましい」としています。
専門性の判断に客観的な基準がなく、自称を許せば誤導のおそれがあるためです。
スペシャリスト、プロ、エキスパートといった用語も同様に扱われます。
一方で「取扱い分野」「取扱い業務」という表示は専門等の評価を伴わないため問題とされません。
経験の豊富でない分野は「積極的に取り組んでいる分野」「関心のある分野」と示すことが望ましいとされています。
企業向けと個人向けを1つのサイトで扱えますか。
扱えますが、導線を分けることが前提です。
企業は複数事務所を比較する冷静な検討過程にあり、個人は多くの場合不安の只中にいて「自分の状況はここで扱ってもらえるのか」の確認と相談経路を求めています。
必要とする情報も読む速度も意思決定までの距離も違うため、同じ導線に乗せるとどちらも取り逃がします。
取扱分野はどう並べるのが効果的ですか。
法律の体系に沿って並べると専門家には整然として見えますが、相談者には探しにくくなります。
企業なら事業のフェーズや部門(契約、労務、債権回収、事業承継、係争)、個人なら置かれた状況(離婚を考えている、相続が発生した、事故に遭った、返済が難しい)——読み手の言葉で並べ替える作業が設計の中身になります。
解決事例やお客様の声を掲載できますか。
業務広告に関する規程 第4条により、訴訟の勝訴率は例外なく表示できません。
顧問先又は依頼者、受任中の事件、過去に取り扱い又は関与した事件は、書面又は電磁的方法による同意があれば掲載できます。
同意を得る際は範囲や有効期限その他必要な事項を明示すべきとされています。
なお「お客様の声」について、実在の依頼者が関与していない文章の記載は、事実に合致しない広告の例として明示されています。
「借金減額診断」のような診断フォームは設置できますか。
日弁連の指針は、入力だけでは事件の処理方針を判断できないにもかかわらず判断できるかのように誤信させる表現として、こうしたページを違反例に挙げています。
さらに、閲覧者が連絡先を入力しても、その入力が事件の依頼または法律相談の申込みである旨がページの記載から明確でない限り、その閲覧者は規程上「面識のない者」に留まります。
面識のない者への電話や、承諾を得ない電子メール等による広告は規程が禁じているため、フォームの文言まで含めた設計が必要になります。
氏名のほかにサイトへ必ず載せるべき情報はありますか。
業務広告に関する規程 第9条は、広告中に氏名および所属弁護士会の表示を求めています。
弁護士法人であれば名称、主たる法律事務所または広告に係る従たる法律事務所の名称、所属弁護士会が必要です。
フッターや事務所概要の設計段階で織り込むべき事項です。
弁護士事務所のサイト設計は、士業全体のWeb設計の一部です。
資格ごとに異なる事情を含めた全体像は、総合ガイドでご確認いただけます。
士業全体のホームページ設計を体系的に解説しています。
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事務所の取扱分野と、増やしたい相談の種類をお聞かせください。
規程を踏まえた構成をご提案します。

アイムアンドカンパニー株式会社 〜設立1999年、創業27年目を迎える〜
代表取締役社長
1956年生まれ 福岡県出身|九州産業大学卒業
江崎グリコ株式会社にて九州支店販売企画課長、本社営業本部営業企画グループ長を歴任し、セールスプロモーション、広告、マーケティングに携わる。TV広告連動のSP展開では、大手広告代理店への発注責任者も務める。
脱サラ後1999年福岡で有限会社オフィス・アイムとして独立、2012年にアイムアンドカンパニー株式会社に組変・社名改変、恵比寿、渋谷から現在の港区赤坂に移転、現在に至る。
同社では黎明期より代表ながらデザイナー、アカウントプランナー、プロデューサーのマルチプレイヤーを務める傍ら、2000年にはオウンドメディアのパンフレット専科の立ち上げからSEOマーケティングを実践主導、リード獲得のWebチャネル確立に25年以上のSEOキャリアを持つ。
獲得した顧客には沖電気、三井化学、ユニ・チャーム、ブリヂストン、日亜化学工業、伊藤忠商事などの大企業はじめ、慶應義塾、早稲田などの総合大学、また古巣の江崎グリコも含み、制作実績は3,000作品に昇る。創業30年に向け、AI新時代のオウンドメディア運用を代表自ら先導する。