公開日:2026.08.07

士業の広告規制とホームページ【資格ごとに違う規律を、実務に落とす】

士業の広告規制とホームページ【資格ごとに違う規律を、実務に落とす】のイメージ

「士業は広告規制が厳しい」とよく言われます。しかし実際には、規律の形式と強度は資格ごとに大きく異なります。弁護士には専用の規程と解釈指針があり、税理士は会則を通じた細則で規律されます。ホームページ制作専科が、公開されている一次資料をもとに、サイト制作の実務に落として整理します。

この記事のポイント

士業の業務広告に関する規律は、資格によって形式と強度が大きく異なります。
弁護士には広告専用の規程(弁護士等の業務広告に関する規程・会規第44号)と、その解釈および運用を定める指針が置かれ、禁止される広告の類型、表示できない広告事項、必須の表示事項、記録の保存義務までが体系的に定められています。
税理士については税理士法に広告を直接規制する条文はなく、会則を守る義務(同法第39条)を通じて各税理士会の細則および日本税理士会連合会の運用指針が適用される構造をとります。
司法書士の業務広告は平成13年に自由化され、その後は債務整理分野について指針が定められています。
社会保険労務士については、法律に広告を直接規制する条文はなく、全国社会保険労務士会連合会の会則が誇大・虚偽の広告と、相手方の承諾を得ない電子メールによる広告を禁じています。
行政書士については行政書士倫理第10条が、不当な目的を意図し、または品位を損なうおそれのある広告宣伝を禁じています。
したがって「士業は広告規制が厳しい」という一般化は実務上の誤りを招きます。本ページは公開されている一次資料にもとづき、資格ごとの規律をホームページ制作の実務要件へ整理します。

序章|「士業は広告規制が厳しい」は正確ではない

士業のホームページ制作について語られるとき、「広告規制が厳しいので表現に注意が必要」という説明がよく添えられます。
間違ってはいません。
しかし一括りにすると実務を誤ります。

公開されている一次資料を確認すると、規律の姿は資格ごとにまったく違います。

資格 規律の形式
弁護士 広告専用の規程+解釈・運用の指針(禁止類型、表示できない事項、必須表示事項、記録保存まで体系化)
税理士 税理士法に広告の直接規定はなく、会則を守る義務を通じて各税理士会の細則・日税連の運用指針が適用
司法書士 平成13年に業務広告が自由化。その後、債務整理分野について指針
社会保険労務士 法に広告の直接規定はなく、連合会会則が誇大・虚偽の広告と、承諾のない電子メール広告を禁止
行政書士 行政書士倫理 第10条が不当な目的・品位を損なうおそれのある広告宣伝を禁止

弁護士の規律は詳細かつ体系的で、禁止される表現が例示レベルまで示されています。
一方、行政書士の規律は倫理規程の一条文に集約されています。
同じ「士業」でも、サイト制作で確認すべき事項の量が桁違いに違います。

この違いを知らずに「士業向けの共通ルール」で制作を進めると、弁護士事務所では規程に触れ、他の資格では過剰に萎縮します。
どちらも損失です。

第1章|規制と個性のパラドックス

士業のブランディングには、構造的な矛盾があります。

士業は【法律・規制・倫理】の側に立つ職業です。
だからこそ社会的な信頼を担っています。
ところが、その実体をそのまま表現すると、どの事務所も同じ顔になります。
取扱業務、資格、経歴、料金——書けることが決まっていれば、書いた結果も似ます。

一方で、事務所が選ばれるためには【個性・独自性・創造】が必要になります。
ここに矛盾が生じます。
規制を守れば個性が消え、個性を出そうとすれば規制に触れる——多くの事務所がこのジレンマの前で立ち止まります。

しかし一次資料を読むと、この二項対立は必ずしも成立しません。

日本弁護士連合会の業務広告に関する指針は、キャッチフレーズについて「表現が抽象的でかつ説明が十分でないことから、広告の受け手に対し、誤解や過度な期待を与えかねない」として注意を促しつつ、事実に反しない限り次のような表示は許されるとしています。

「市民の味方です。」/「懇切丁寧にやります。」/「闘う弁護士」/「モットーは迅速第一」

出典:日本弁護士連合会「業務広告に関する指針」(平成24年3月15日理事会議決/最新改正 令和8年2月19日)

規制は個性の表現そのものを禁じているわけではありません。
禁じられているのは、事実に反する表示、誤導、誇大、不安の煽動、他事務所との比較です。
逆に言えば、事実に裏づけられた個性であれば表現できます。

パラドックスの解き方はここにあります。
事務所の理念、沿革、立地、体制——実在する固有の資産を、事実の範囲で表現へ翻訳します。
これは規制の回避ではなく、規制の枠内での設計です。

第2章|弁護士 最も体系的な規律

弁護士の業務広告は、日本弁護士連合会の「弁護士等の業務広告に関する規程」(平成12年3月24日 会規第44号)と、同規程第13条にもとづく「業務広告に関する指針」の二層で規律されています。
ホームページ制作に直結する論点を挙げます。

01 禁止される広告の7類型

規程第3条は、次の広告をすることができないと定めます。

  1. 事実に合致していない広告
  2. 誤導又は誤認のおそれのある広告
  3. 誇大又は過度な期待を抱かせる広告
  4. 困惑させ、又は過度な不安をあおる広告
  5. 特定の弁護士、弁護士法人、外国法事務弁護士、外国法事務弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人又はこれらの事務所と比較した広告
  6. 法令又は本会若しくは所属弁護士会の会則若しくは会規に違反する広告
  7. 弁護士等の品位又は信用を損なうおそれのある広告
出典:日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」(会規第44号)第3条

条文中の「本会」は日本弁護士連合会を指します。
第5号が長い列挙になっているのは、弁護士個人だけでなく弁護士法人・外国法事務弁護士等も比較の対象に含めているためです。

比較広告については、指針が踏み込んでいます。
事務所名を出していなくても、全体的な表現から特定の事務所を指していると認められれば同様に扱われます。

02 「専門」表示は控えるのが望ましい

指針は専門分野の表示について、専門性判断の客観性が担保されない現状では誤導のおそれがあるとして、表示を控えるのが望ましいとしています。
スペシャリスト、プロ、エキスパートといった用語も同様です。

一方で、次の表示は問題とされません。

  • 「取扱い分野」「取扱い業務」——専門等の評価を伴わないため
  • 「得意分野」——主観的評価であることが明らかなため(実際に得意でないものを表示する場合を除く)
  • 経験が豊富でない分野は「積極的に取り組んでいる分野」「関心のある分野」と示すことが望ましい

サイト制作では「専門分野」という見出しが定番だが、弁護士サイトではそのまま使えません。
構成の根幹に関わる制約です。

03 注意すべき用語

指針は、文脈により違反となり得るため十分注意すべき用語を挙げています。

  • 「最も」「一番」など最大級を表現した用語
  • 「完璧」「パーフェクト」など完全を意味する用語
  • 「信頼性抜群」「顧客満足度」など実証不能な優位性を示す用語
  • 「常勝」「不敗」など結果を保証又は確信させる用語

一般企業サイトで定番の「顧客満足度○%」が、ここに含まれます。

04 表示できない広告事項

規程第4条は、次の事項を表示した広告をすることができないと定めます。

  • 訴訟の勝訴率
  • 顧問先又は依頼者。ただし、顧問先又は依頼者の書面又は電磁的方法による同意がある場合を除く。
  • 受任中の事件。ただし、依頼者の書面又は電磁的方法による同意がある場合及び依頼者が特定されず、かつ、依頼者の利益を損なうおそれがない場合を除く。
  • 過去に取り扱い、又は関与した事件。ただし、依頼者の書面又は電磁的方法による同意がある場合及び広く一般に知られている事件又は依頼者が特定されない場合で、かつ、依頼者の利益を損なうおそれがない場合を除く。
出典:日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」(会規第44号)第4条

第1号の訴訟の勝訴率にはただし書きがありません。
つまり同意の有無にかかわらず表示できない事項です。

指針は、同意を得る際に範囲・有効期限その他必要な事項を明示すべきこと、過去の顧問先を表示する場合はその旨を明示して誤導を避けるべきことを示しています。
顧問先・依頼者は名目的な関係では足りず、実質的な関係を備えている必要があるとされます。

また「お客様の声」については、実在の依頼者が関与していない文章を記載することが、事実に合致しない広告の例として挙げられています。
解決事例を脚色して記載することも同様です。

05 必須の表示事項

規程第9条は、広告中に氏名および所属弁護士会の表示を求めます。
弁護士法人であれば、名称、主たる法律事務所又は広告に係る従たる法律事務所の名称、所属弁護士会です。

さらに規程第9条の2は、電話・電子メールその他の通信手段により法律事務を受任する場合について広告するときは、上記に加えて次の表示を求めます。

  1. 受任する法律事務の表示及び範囲
  2. 報酬の種類、金額、算定方法及び支払時期
  3. 委任事務の終了に至るまで委任契約の解除ができる旨及び委任契約が中途で終了した場合の清算方法

「オンライン相談対応」と訴求するなら、料金と契約条件の明示が伴います。

06 ウェブ特有の論点|診断フォーム

指針は、「借金減額診断」「借金減額シミュレーター」「交通事故慰謝料算定システム」「婚姻費用・養育費算定シミュレーター」、詐欺等の被害金の返金可能性に関する「無料診断」等と称するページについて、入力のみでは事件の処理方針等を判断できないにもかかわらず判断できるかのように誤信させる表現として違反例に挙げています。

さらに重要な指摘があります。
こうしたページで閲覧者に連絡先を入力させた場合であっても、その入力が事件の依頼又は法律相談の申込みとなる旨がページの記載から明確である等の特段の事情がない限り、当該閲覧者は規程第5条の「面識のない者」に該当します。
本人確認のため運転免許証等の画像をアップロードさせていても同様とされます。

規程第5条は、面識のない者への訪問・電話による広告を禁じ、承諾を得ない電子メール・ファクシミリ・SMS・SNSのメッセージ機能等による広告も禁じています。
つまりフォームで集めた連絡先へ営業的な連絡を行う設計は、規程違反になり得ます。

なお規程における「面識のない者」とは、現在及び過去の依頼者、友人、親族並びにこれらに準じる者以外の者をいいます(規程第5条第1項)。

07 記録の保存義務|制作会社が関わる論点

規程第11条は、広告をした弁護士等に対し、記録の保存を求めています。

第十一条 広告をした弁護士等は、広告物又はその複製、写真等の当該広告物に代わる記録、広告をした日時、場所、送付先等の広告方法に関する記録、当該広告に関する業務を委託した事業者(以下「広告業者」という。)との契約書その他の広告業者との間の契約の内容を証する書面又は電磁的記録及び当該契約に係る入出金に関する記録並びに第四条第二号から第四号までに掲げる同意を証する書面又は電磁的記録を当該広告が終了した時から三年間保存しなければならない。

出典:日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」(会規第44号)第11条

一文で読みにくいので、保存対象を分解すると次の4つです。

  • 広告物又はその複製、写真等の当該広告物に代わる記録
  • 広告をした日時、場所、送付先等の広告方法に関する記録
  • 広告業者との契約書その他の契約の内容を証する書面又は電磁的記録、および当該契約に係る入出金に関する記録
  • 第4条第2号から第4号までに掲げる同意を証する書面又は電磁的記録

保存期間は広告が終了した時から3年間です。

このうち広告業者との契約書等・入出金記録および同意記録に関する部分は、令和7年12月5日の改正により追加され、令和8年7月1日から施行されています(同規程 附則)。

ホームページ制作会社は規程上の「広告業者」に当たり得ます。
つまり制作契約書や請求・入金の記録が、弁護士側の保存義務の対象になりました。
制作会社は「保存できる形で書類を渡す」ことが実務要件になります。

08 事実であることの証明

規程第12条は、広告が第3条第1号(事実に合致していない広告)に該当する疑いがあるとき、弁護士会が広告内容が事実に合致していることを証明するよう求めることができるとし、証明できなかったときは当該広告を第3条第1号に該当するものとみなすことができると定めます。

掲載して終わりではありません。
実績や事例は、後から根拠を示せる形で残しておく必要があります。

第3章|税理士 法律ではなく会則を通じた規律

税理士の業務広告は、平成13年の税理士法改正により原則として自由化されました。
税理士法自体に、広告を直接規制する条文は置かれていません。

ただし規律がないわけではありません。
税理士法は次のように定めます。

第三十七条(信用失墜行為の禁止) 税理士は、税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
第三十九条(会則を守る義務) 税理士は、所属税理士会及び日本税理士会連合会の会則を守らなければならない。

出典:税理士法(e-Gov法令検索)

この第39条が要です。
会則を守る義務を通じて、各税理士会が定める「会員の業務の広告に関する細則」と、日本税理士会連合会の運用指針が適用されます。
細則には禁止される広告や表示できない広告事項が定められています。

構造を整理すると次のようになります。

税理士法第39条(会則遵守義務)→ 各税理士会の会則 → 会員の業務の広告に関する細則 → 日税連の運用指針
(底面を税理士法第37条=信用失墜行為の禁止が支える)

注意すべきは、細則が各税理士会(単位会)ごとに定められ、運用指針が日税連の定めるという二層構造である点です。
弁護士のように日弁連が規程と指針を一元的に定める形とは異なります。

そして細則および運用指針の正本は、各税理士会の会員に向けて公開されています。
したがって具体的な表現の可否は、先生ご自身が所属税理士会の細則を確認して判断する領域になります。

制作会社にできるのは、掲載したい情報を整理し、確認が必要な箇所を洗い出すことです。
代わりに判断してよい領域ではありません。

第4章|司法書士 自由化と分野別の指針

司法書士の業務広告は、平成13年に自由化されています。

日本司法書士会連合会の会長談話(2009年4月13日・会長 佐藤純通)は、次のように述べています。

司法書士の広告については平成13年より自由化されていますが、市民の皆様に司法書士の業務をわかりやすく紹介できるよう、現在当連合会では、主に債務整理に関しての広告表現ガイドラインの策定を検討しており、実態調査の実施についても検討を行っていく方針です。

出典:日本司法書士会連合会 会長談話「司法書士業務の広告について」(2009年4月13日)
https://www.shiho-shoshi.or.jp/association/info_disclosure/statement_list/936/

同談話は、司法書士事務所の広告が各種メディアで増加し、広告表現についての市民からの問合せが各地の司法書士会および連合会に寄せられている、という状況認識のもとで出されたものです。

その後、同連合会は「債務整理事件の処理に関する指針」を制定しました(2025年4月25日 会長談話で公表)。
同談話は「例えば広告の表示や司法書士の誘導により、依頼者が直接面談を希望しているにも関わらずウェブ面談がなされることは認められません。」と述べており、債務整理分野については、広告表示が面談のあり方と結びつけて規律されています。

出典:日本司法書士会連合会 会長談話「債務整理事件の処理に関する指針の制定について」(2025年4月25日)
https://www.shiho-shoshi.or.jp/association/info_disclosure/statement_list/post_1/

つまり司法書士の場合、全業務を横断する広告専用の規程という形ではなく、自由化を前提としつつ問題が生じやすい分野に個別の規律を置く構成になっています。

本稿執筆時点で、当社が確認できた公開資料は上記の範囲です。
個別の表現の可否については、所属する司法書士会にご確認ください。

第5章|行政書士 倫理規程の一条文

行政書士については、日本行政書士会連合会の「行政書士倫理」第10条が広告宣伝について定めています。

第10条(広告宣伝) 行政書士は、不当な目的を意図し、又は品位を損なうおそれのある広告宣伝を行ってはならない。

出典:日本行政書士会連合会「行政書士倫理」(平成18年1月19日理事会承認/平成24年11月14日・平成26年1月16日・令和2年4月24日改正)

関連する条文として、同倫理は次も定めています。

第1条(行政書士の責務) 行政書士は、誠実にその業務を行うとともに、行政書士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
第7条(不当誘致等の禁止) 行政書士は、不正又は不当な手段で、依頼を誘致するような行為をしてはならない。

弁護士の規程のように禁止類型が例示レベルまで列挙されているわけではありません。
規律の中心は「品位」と「不当な目的」という一般的な基準にあります。

これは自由度が高いことを意味する一方で、判断の基準が抽象的であることも意味します。
個別の表現について迷う場合は、所属する行政書士会に確認するのが確実です。

第6章|社会保険労務士 法・会則・倫理綱領の三層

社会保険労務士の規律は、税理士と似た構造を持ちながら、会則の書きぶりに違いがあります。

01 法律には広告の規定がない

社会保険労務士法は、次のように定めます。

第十六条(信用失墜行為の禁止) 社会保険労務士は、社会保険労務士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。

出典:社会保険労務士法(昭和43年法律第89号/e-Gov法令検索)

同法に広告を直接規制する条文はありません。
ここは税理士と同じです。

会則遵守義務の条文も置かれています。

第二十五条の三十(会則を守る義務) 社会保険労務士は、所属社会保険労務士会の会則を守らなければならない。

出典:社会保険労務士法(昭和43年法律第89号/e-Gov法令検索)

つまり社労士も、税理士と同じく「法律の会則遵守義務を通じて会則が適用される」という構造になります。
ただし義務の対象は所属社会保険労務士会の会則であり、税理士法第39条が所属税理士会と日本税理士会連合会の両方を挙げているのとは書きぶりが異なります。

02 会則に広告の明文がある

規律の実体は、全国社会保険労務士会連合会の会則にあります。

第43条の4(不当勧誘等の禁止)
3 社会保険労務士会の会員は、誇大若しくは虚偽の事項により相手方を欺くおそれがある方法で、広告又は宣伝を行ってはならない。
4 社会保険労務士会の会員は、相手方の承諾を得ずに電子メールにより広告を送信してはならない。

出典:全国社会保険労務士会連合会会則(令和6年11月29日施行)第43条の4

同条は第1項で不実告知や事実の不告知による勧誘を、第2項で依頼しない旨を表示した相手への勧誘を、第5項で威迫による依頼撤回の妨害を、それぞれ禁じています。

第4項は注目に値します。
承諾のない電子メール広告の禁止は、弁護士の規程第5条第2項と同種の規律です。
資格をまたいで共通する論点であり、Webサイトのフォームで取得した連絡先へメールを送る設計は、資格を問わず承諾の有無が問われます。

また、サイトの料金表示に関わる条文もあります。

第43条の3 第2項 社会保険労務士会の会員は、事案の受任に際して、依頼人に対し、業務の内容、報酬等を書面の交付等により明示し、かつ、十分に説明しなければならない。

受任時の義務ではあるが、サイト上でどこまで料金を示すかという設計と地続きです。

03 倫理綱領に広告の規定はない

社会保険労務士倫理綱領は、品位の保持、知識の涵養、信頼の高揚、相互の信義、守秘の義務の5項目で構成されます。
広告・宣伝に関する条文は置かれていません(行政書士倫理 第10条に相当する規定はない)。

04 まとめると

社労士の広告規律は、法律ではなく会則にあります。
禁止の水準は「誇大若しくは虚偽の事項により相手方を欺くおそれがある方法」であり、弁護士のような禁止類型の例示はありません。
判断基準の抽象度は相対的に高いです。

「広告専用の規程がないから規律もない」というのは誤りです。
会則第43条の4を確認したうえで設計する必要があります。

第7章|サイト制作の実務に落とす

資格ごとの違いを踏まえたうえで、ホームページ制作の工程に落とすと次のようになります。

01 設計段階で「確認が必要な表現」を洗い出す

掲載したい情報のうち、規律に関わる可能性があるものを設計段階でリスト化します。
実績、事例、顧客名、料金表現、キャッチコピー、資格や経歴の表示、フォームの文言。
公開直前に持ち越すと、判断待ちで工程が止まります。

02 同意取得を工程に組み込む

弁護士の場合、顧問先・依頼者・事例の掲載には同意が要件となります。
同意は範囲と有効期限を明示して取得します。
「実績を載せる」という一行の要望が、作業と時間を伴います。

03 記録を残す設計にする

弁護士の場合、規程第11条により契約書・入出金記録・同意記録が3年間の保存対象となります(令和8年7月1日施行)。
制作会社は、これらを保存できる形で渡します。

04 制作会社との事前打合せ

指針は、テレビ・ラジオ・動画サイト・SNS等で動画を配信して行う広告について、短時間で視聴者の感覚や感情に直接印象づける媒体であり不正確な印象を与えるおそれがあることを踏まえ、事前に広告制作者及び出演者と十分に打ち合わせ、規程第3条各号に抵触しないようにすることが望ましいとしています。

指針そのものが、制作者との事前の打合せに言及しています。
規程理解を持つ制作パートナーを選ぶことは、実務上の要請でもあります。

05 最終判断は所属会に確認する

本稿は公開されている一次資料の整理です。
個別の表現が規律に触れるかどうかの最終判断は、先生ご自身と所属する会への確認によります。
制作会社が法解釈を断定する立場にないことは、明確にしておきます。

終章|まとめ 規律は資格ごとに違う

士業の業務広告に関する規律は、資格によって形式も強度も違います。
弁護士には体系的な規程と指針があり、税理士は会則を通じた細則で規律され、司法書士は自由化を前提に分野別の指針を持ち、社会保険労務士は会則が誇大・虚偽の広告と承諾なき電子メール広告を禁じ、行政書士は倫理規程の一条文に集約されています。
「士業は広告規制が厳しい」という一括りの理解は、実務では役に立ちません。

そして規律は、個性の表現そのものを禁じていません。
禁じられているのは事実に反する表示、誤導、誇大、不安の煽動、比較です。
事実に裏づけられた個性であれば、表現できます。

規制の枠内で事務所の固有性をどう立てるか。
それが士業サイトの設計そのものです。

なお、本稿で扱った規程・指針は改正が入る領域です。
参照した資料の版と改正日は各章に付しました。
実務では、執筆時点ではなく制作時点の最新版をご確認ください。

事務所のサイトで表現したいことと、確認が必要になりそうな箇所——まずはそこからご相談ください。

よくある質問

Q1

士業はどの資格も広告規制が厳しいのでしょうか。

A1

規律の形式も強度も、資格によって大きく異なります。
弁護士には広告専用の規程と解釈・運用の指針があり、禁止類型から必須表示事項、記録保存まで体系化されています。
税理士は税理士法に直接の規定を持たず、会則を守る義務を通じて各税理士会の細則と日税連の運用指針が適用されます。
司法書士は平成13年に業務広告が自由化され、その後に債務整理分野の指針が置かれました。
社会保険労務士は連合会会則が誇大・虚偽の広告と承諾のない電子メール広告を禁じています。
行政書士は行政書士倫理 第10条に集約されています。
「士業は広告規制が厳しい」という一括りの理解は、実務では役に立ちません。

Q2

規制があるなかで、事務所の個性は打ち出せますか。

A2

打ち出せます。
規律が禁じているのは、事実に反する表示、誤導、誇大、不安の煽動、比較です。
個性の表現そのものは禁じられていません。
事実に裏づけられた個性であれば表現できます。
日弁連の指針も、事実に反しない限りキャッチフレーズの使用を認めています。

Q3

「専門」という言葉は使えないのですか。

A3

弁護士については、日弁連の指針が専門分野の表示を「控えるのが望ましい」としています。
専門性の判断に客観的な基準がなく、自称を許せば誤導のおそれがあるためです。
「取扱い分野」「取扱い業務」という表示は専門等の評価を伴わないため問題とされません。
なお、この扱いは弁護士の指針にもとづくもので、他の資格には別の規律が適用されます。

Q4

制作会社にも規程上の義務が及ぶことはありますか。

A4

弁護士の広告では、規程第11条により、広告物や広告方法の記録に加え、広告業者との契約書等および当該契約に係る入出金の記録、掲載同意を証する記録が、広告終了時から3年間の保存対象とされています(この部分は令和8年7月1日施行)。
制作会社は規程上の「広告業者」に当たり得るため、契約書や請求・入金の記録を保存できる形で渡せるかが実務要件になります。
また指針は、動画による広告について事前に広告制作者及び出演者と十分に打ち合わせることが望ましいとしています。

Q5

承諾を得ていない相手へのメール送信は、どの資格でも問題になりますか。

A5

少なくとも弁護士と社会保険労務士には明文があります。
弁護士は面識のない者への訪問・電話による広告、および承諾を得ない電子メール等による広告を規程が禁じています(第5条)。
社会保険労務士は連合会会則 第43条の4第4項が「相手方の承諾を得ずに電子メールにより広告を送信してはならない」と定めています。
Webフォームで取得した連絡先への送信は、資格を問わず承諾の有無が問われる論点です。

Q6

最終的な表現の可否は誰が判断するのですか。

A6

先生ご自身と所属する会です。
本記事は公開されている一次資料の整理であり、制作会社が法解釈を断定する立場にないことは明確にしておきたい点です。
私たちは設計段階で「確認が必要な表現」を洗い出し、確認の順序を含めた進行計画を立てる役割を担います。
なお本記事で扱った規程・指針は改正が入る領域です。
制作時点の最新版をご確認ください。

 

広告規律は、士業サイトを設計するうえでの前提条件のひとつです。
その前提を踏まえた情報設計の全体像は、総合ガイドでご確認いただけます。


規律を踏まえたうえで「では実際にどう見せるか」は、資格ごとに設計が分かれます。
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事務所内での検討や、先生と担当者の認識合わせにもご活用ください。

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